父よ、ごめん!
掲載日:2011.06.10
先日、母が一人で暮らす地方の実家に行ってきました。二泊三日で、東京に住む弟と一緒に家のメンテナンスや不要品の片付をするのが目的です。
予想はしていましたが父が亡くなって10年、新たに増えた母のモノがあふれて、家の中はまさに足の踏み場のない状態。私たちが来るので、あれやこれやと引っ張りだしたのかとも思いましたがそうではなく、どうやら常日頃その状態らしい。
一足遅れて到着した弟は、ドアを開けるなりたまげて怒りだし、姿が見えなくなったので探しにゆくと、奥にしゃがみ込んで電話中。「すごいことになってるよ~」と東京の妻に言いつけているところでした(!^^)
どこで寝たものかと思案していると、母が「ホテル予約したから」と言うので、夕食はホテルで食べるのねと思えば、なんと皆でホテルに泊まると……。
次の朝からはホテルから出勤。まずゴミ出しです。最寄りのゴミステーションはベニヤ板で囲った小さなサークル。我が家の分を入れるとあふれそう。ご近所中の関心を集めるのは必至。きちんと積み上げ、あたりを掃除したりする私のスタンドプレイぶりは健気です。さて、弟は家の中、私は車庫と分担して作業開始。
車が無くなった車庫には、母の貯め込んだゴミやダンボール箱や古い家電類やらがどっさり。少しずつ外に放り出し、仕分けて3種のゴミ袋に詰め込み、ダンボール箱は開いてしばり、大量のスプレー缶は穴をあけました。 母84才ならば、子供らも50代。中腰の作業は腰や膝にきますが、さわやかに晴れた陽気は作業内容を緩和してくれました。
時々、弟が一服しに家の中から避難してきます。きりがないよ~と愚痴るので、全部は終わらないけどそれが目的じゃないから、と慰めます。行動を始めれば、ものごとは見えてくるでしょ?と、思いたい。
残念ながら、粗大ゴミの回収日は帰る日の翌日。前日から「粗大ゴミシール」を貼って敷地内に出していくしかありません。
ところが、ステレオはゴミシールを貼ろうとしたその瞬間「ご不要の電気製品はございませんか~」と道の向こうから廃品回収のトラックが現れて、持っていってくれました。
さらに残りの家具類も、その日のうちに通りすがりの近所の方が、それぞれ引き取って下さったそう。ここ数日の片付けをしている気配を、ご近所から注目してもらえた成果でしょうか。
父の全集本は市の図書館に寄贈できました。いつか、図書館に行って父のくせのある字の書き込みを見ることができたら嬉しいな、と思っています。
生きている母が安全に暮らすため、という大義名分のために、父の遺品を捨てまくりました。母に「見せない」「聞かない」「考えさせない」が私と弟のスローガン。
おいおい、お前たちは~という父の声が聞こえるようです。
後日、空になった本棚の中を雑巾でふいていると、ぽつんと父の眼鏡があった、と母から電話がありました。母は不思議がっていましたが、父が「見てるぞ。ありがとう」と言ったのではないかと私は思います。