勝手がいい
掲載日:2015.11.27
友人に「最近の家は勝手口がないの?」と聞かれました。ううむ、さすが私と同年代。友よ、今や「お勝手」はほとんど死語、ましてや勝手口はさらに、なのだよ。
一応、説明させていただくと「お勝手」とは、台所、キッチンのことです。その昔、主婦が自由にできる唯一のスペースだったので、そう呼ばれていたとか。今では、家族誰でも、家中どこでも自由なので、その言葉はまるで意味がなくなったのかも。お勝手の一角に設けられた、外との出入口が勝手口です。
サザエさんの家の勝手口には、三川屋のサブちゃんがご用聞きや配達に来ます。下駄箱の上に額がかかっていて、お客様が訪れるよそいきの玄関とは違う、台所関連の普段の出入口が勝手口です。
一般家庭へご用聞きが来るというシステムが消えた現代。宅配便は防犯カメラでチェックされて、玄関からやって来ます。磯野家の環境とは、ずいぶん変わりました。
昭和の北海道の住宅では防寒のためか、台所と仕切られて、小さな土間のある「裏口」がよくありました。風呂釜の焚口が、そこにあることも多かったし、そこが脱衣所に使われることもありました。冬は寒かったです。現代のユーティリティ的な用途ですが、外部への出入ができます。燃料の石炭や薪を取り込むために必要だったのでしょう。
いつの間にか、このような裏口を見なくなりました。風呂釜は給湯器になり、狭くて寒い脱衣所は嫌われて。半端なスペースは無駄だし。敷地が狭いと裏口の外の除雪もままなりません。
でも現代でも、キッチンあたりの出入り口は、よく設けられます。外部物置やガレージ、家庭菜園などに連絡させて考えられます。そして、もっぱら家族だけが出入りします。
おかあさんがいつもそこにいる磯野家と違って、無人になることもあるので、扉は施錠されていることも多いかもしれません。
扉は断熱仕様で、外側に雨や雪を避けられる、ちょっとした庇や囲いがあると、断然使いやすくなります。
あまり意識することがないかもしれませんが、もうひとつの機能が、緊急避難出口になることです。火事や地震などの災害時に、屋外に脱出できる、玄関以外の第二の脱出口になります。
通路確保ができるように、片付けやすく、扉を開けやすく考えておくのはどうでしょう?意外と、平常時にも勝手がいいですよ。