女王が溺れる甘い酒

掲載日:2016.06.10

近所に来ていた造園屋さんが、スズメバチ捕りのトラップの作り方を教えてくれました。

1)日本酒(極甘口)1000 cc、酢(安いのでよい) 500 cc、砂糖 500 gをよく混ぜ合わせて、空の1000ccのペットボトルに7~8cm入れる。
2)フタを閉めてボトルの上の方に、2cm角の大きさでHの字の形にカッターで切り目を作る。
3)Hの横棒の上をひさしのように外側に、下は内側に少し折り曲げる。玄関ポーチ?
4)スズメバチを見かけるあたりの木に、針金などで吊るす。ハチが匂いに惹かれて集まってくるので、人の通り道や子供の遊ぶ場所は避ける。夏になったら吊るすわ、と言うと「いや、今だ」ときっぱり。なぜなら、今なら女王蜂が来るから。女王蜂というのは巣の奥深くで、多くの働き蜂に囲まれていて、その辺を飛び回ったりしないように思っていたのですが、スズメバチの女王は違うのだそうです。

話は昨年に戻ります。秋の晴れた日、成長した若い女王蜂は母女王の古巣を離れて飛び立ちました。あわてて数匹の雄蜂が後を追います。彼らは後尾をした後、死んでしまいしたが、女王蜂は精子を持ったまま、朽ち木の間などで、たった1匹で越冬したのです。春、冬眠から冷めた女王蜂は自分でエサを探しながら、巣を作る場所を探し、小さな巣を作ってそこで産卵します。ここまでは、全く単独。しかも王国が順調に稼働し始めるまで、自らも子供の世話や巣の建設を続けるのだそうです。強くて働き者の女王なのですね。性格や顔が若干きついのも納得。働き蜂が充分増えて巣も大きくなった頃、雄蜂の卵を産み、次の女王蜂が作られ、やがて晴れた秋の日に飛び立ちます。巣に残された老女王蜂と働き蜂はやがて死に、その巣は再び使われることはありません。

王国の1年を眺めると、なるほど、スズメバチのトラップは今が一番効果的ということがわかります。でも単身、王国を築くために頑張ってる女王蜂が、哀れなような。いや、人間の女王も家族を守らねば。若い女王よ、目先の甘いお酒の罠にかからず、しっかりと安全な場所を選んで下さいな。