宮島
掲載日:2016.12.25
ご飯をお茶碗によそう時のあの道具、お宅では何と呼んでいますか?「しゃもじ」派と「へら」派があるようですが。ちなみに、我が家は後者。キッチンの他のヘラと区別して「ご飯のおヘラ」と言っていることもあります。
もうひとつ、聞き慣れない「宮島」という呼び方、ご存知でしょうか?和食のお店の人に教えてもらったのですが、何故?
広島の宮島じゃないですかね、と言われました。海の上に朱塗りの大鳥居が立つ厳島(いつくしま)神社があるところです。
厳島神社にお参りした人のお土産に、木のしゃもじが有名なので産地を問わずしゃもじを「宮島」と呼ぶようになった、というこ
とのようです。
18世紀、地元の僧が地域おこしのために、参拝客の土産物になるようにと、考案したそうです。先が丸い形は、僧の夢に出て来た弁財天が持つ楽器の琵琶の形。
島に育つ木で島民が作り続けてきました。ご飯がくっつきにくく匂いのない木ということで、朴(ホオ)の木が使われていました。(ほぉ~)
どこの家にも必要で、実用的な形で、たくさん買っても軽くてコンパクトで持ち帰りやすいので、長く人気のお土産品になったのですね。
明治時代以降の戦争の時には「宮島」は、敵をメシとる、武運を祈願する縁起物として、また帰還兵の故郷へのお土産でもあったそうです。私たちは、戦ったり召し捕ったりすることなく、皆で仲良くご飯を食べたいものです。
ところで、厳島神社の海に立つ大鳥居も社殿の回廊も、下の方が海水に浸っています。木なのに腐らないのかしら、と心配になりますね。大鳥居には腐りにくいクスノキが使われ、美しい朱塗も防腐剤としても機能しているとか。
傷みやすい部分は、修理しやすいように工夫されていて、常に修理し、傷んだ部分を取り替えることによって、今も美しい姿が伝えられています。次の修理に使える巨大なクスノキがない現在、新たな植林運動が行われているそうです。
海の鳥居も小さな「宮島」も、木の文化と人に支えられています。