木を叩く音でクマにお知らせ
掲載日:2017.06.26
「アイヌ最強のクマ撃ちが残した最高のクマの教科書」という本を読みました。とても面白くて、一気に読み終えてしまいました。
クマ撃ち猟師の姉崎 等さんにインタビューした聞き書きの本です。姉崎さんは1923年生まれ。千歳周辺を拠点に1990年までに、60頭を穫り、2013年に亡くなりました。
アイヌ民族のことも出て来ますが、姉崎さん独自の世界観が語られ、クマや自然についてだけでなく、普遍的な静かさが感じられる内容です。語り口に宗教めいたところはなく、実際的で穏やかです。
その中から役に立つお話を、ご紹介しましょう。
山菜採りや釣りで山に入る時、クマに人間がいることを知らせるために鈴をつけたり、空き缶を叩いたり、ホイッスルを吹いたりすることが、広く行われています。クマはむやみに人間を襲うのではなく、人間を避けようとするのです。
それは一定の効果はあるのですが、姉崎さんによると「もう大分その音に慣れてしまっている」そうなのです。確かに私たち人間も、携帯や家電のアラーム音にすぐ慣れてしまいますね。
さらに、クマが恐ろしいはずの鉄砲の音も、千歳では効果がないそう。自衛隊の演習で聞き慣れているから、だそうです。
それで、彼が実行していて効果があると思っているのは、何と空のペットボトルをペコペコ押す音。弱そうな頼りないような気もしますが、熊は「何だか聞き慣れない嫌な音だなあ」と思って、避けるというのです。
もうひとつは、木をタテに叩く音。細い棒で樹木をタテに叩くとビーンと音が響いて、人間の存在を知らせるそう。
私も試してみましたが(対クマ効果ではなく音響効果の方!^^)、横に叩いたのでは音はこもって、あまり響きませんでした。タテに伸びる木の組織で、音も変わるのでしょうか。
ペットボトルはたいてい持っていますし、木を叩く棒も現地調達が簡単です。うっかり対策を忘れた時、時々、ぺこぺこ、ビーンビーンと音をさせると、やらないよりはましかも。
6月はクマの発情期だそう。彼女のことで頭がいっぱいのクマが、人間に不注意になっていて、うっかりニアミスのあげく逆ギレさせたりすると不幸です。ご注意を。
☆語り手・姉崎 等/聞き書き・片山龍峯
『クマにあったらどうするか』株式会社筑摩書房 2014年