それぞれの桜

掲載日:2021.04.26

我が家の庭に桜はありません。なぜかというと、両隣の敷地に立派な桜があるからです。どちらも大きな木が見事に咲き、両方をほどよい距離で眺める我が家が一番のお花見スポット?と思っています。

片側は小さな施設で専門に庭を手入れする庭師がいて、ゆきとどいています。庭の奥に続く道に沿って桜があり、我が家のアプローチとも並んで、とてもいい感じ(^_^)v

「俺が入社した頃に、5メートルおきに植えたのね」と、隣の老庭師が言っていました。現在、抜けた間や切り株があるのは、その間隔と思われます。

その老庭師と我が家に来ていた造園屋が、たまたま立ち話をしていたことがありました。私が、隣の桜をほめると、「ソメイヨシノでしょ」と、なぜかちょっと馬鹿にしたように造園屋。隣の庭師がいるのに失礼でしょ、と困る私。しかし、意外なことに「まあね」とにやにやしている隣の庭師。おや?

「道の奥の方に、昔からあった桜があってきれいだよお」と老庭師が言って、庭屋二人で頷きあっています。ああ、納得。この人たちは、(エゾ)ヤマザクラが一番好きなのですね。実は、私も子供の頃から見慣れてきたその桜が好きなので、嬉しくなりました。

若い頃、道外出身の人に「北海道の桜は花が赤いし、花も葉も一緒で、はかなさがないよね」と言われて憤慨した記憶が。同時に、ああそうなのか、とも思ったのでした。北国育ちの私の桜感覚は、ちょっと違っているのだなと。種類もですが、入学式に桜が咲いてたことはないですし。合格電報の「サクラサイタ」(?の方はスルーして下さい)も季節感とは別でした。

野趣のある赤っぽい印象の桜がエゾヤマザクラ。北国の春を凝縮したような濃い目のピンク色の花と、赤味を帯びた小さな葉が一緒に広がります。

白っぽい花ではかなげなのがソメイヨシノです。寒さには若干弱く、群生地の北限は美唄だそうです。ソメイヨシノは、江戸時代末に品種改良で生まれ、今私たちが見ているすべての木は、ただ1本から殖やされたクローンなのだそう。なので同じ場所では同期して、一斉に咲いて一斉に散る。はかない美しさのゆえんですね。

どの桜も嬉しい北国の春です。