シナの木
掲載日:2011.07.10
道を歩いていたら、甘い蜜の香りが流れてきました。顔を上げると蜜蜂が飛んでいます。目で追っていくと、ありました。大きなシナの木に花が満開でした。
満開といっても、緑色がかった薄黄色の目立たない花です。でも、その形はなかなか独創的。その木の葉はまるみのあるハート型ですが、根元からその葉とは形の違うひょろ長い葉。そして、その細長い葉(苞)の真ん中に花の房が垂れ下っているのです。
その花と甘い香りは知っていたのですが、うかつなことにその木が「シナ」だと知りませんでした。「シナ」は建築では、とてもおなじみの材料なのですが。教えてもらった時はびっくり。
建築では、ベニヤの表面材として多く使われてきたシナ。建築以外では、北海道の伝統的お土産の熊の彫り物もシナだそうです。
柔らかくてさっくり彫れそうな感じがしますね。他には、割箸やアイスクリームの匙にも使われていたそうです。熊以外、あまり優遇されていなかったような(T^T)
しかも建築では、もっぱら不透明なペンキ塗りの下地として、塗りつぶして使ってきました。きめ細かくてなめらかな肌はそれに向いていたのですが、せっかくの木肌なら生かすもよいかも。
最近たまに、シナを素地のままや透明な塗装だけで仕上げた内装や家具を見かけますが、新鮮ないい感じです。シナの木の色は、少し肌色がった白っぽいクリーム色。小さな節や色ムラはありますが、木目はおとなしいので、優しい明るい仕上がりになります。
生きているシナノキは山中だけでなく、街路樹や公園でもよく見かけます。今の季節なら、蜜の香りと面白い形の花で見わけやすいです。