〈クズ〉はクズじゃない
掲載日:2011.11.10
「剪定したトウヒの枝があるから、リースを作りにこない?」
と誘われて、もう一人の友人と2人でお邪魔しました。
「リースの前に、隣の空き地で〈クズ〉を 採らない?」
家の前で迎えてくれた友人が、クズのツルは簡単に編めて面白いと言うのです。ほら、と指差した玄関の脇の大きなバスケット。
ツルをざっくり編んだ中に、秋の野菜や木の実の彩りがきれい。
早速、空き地へ。雨上がりでほどよく湿り、引っ張るだけで長いツルが面白いように採れます。晴れた秋空の下、3人できゃあきゃあと。
ずるずると長いツルを玄関ポーチに引き込み、そのまま座り込んでツル細工に突入。思いのほか曲げやすく丈夫です。立体的なバスケットはちょっと難しそうなので、丸いリング状の「鍋敷き」をせっせと制作。ツルの太さに合わせて、大きさや厚みを色々に、どっさりと鍋敷きができました。一家にせいぜい大小2個あればいいようなものですが、この出来映えなら人にあげても喜ばれるに違いない。
こんなに素敵なモノ、だまって採っていいのかと心配になります。
しかし友人は、絶対に大丈夫、みんな手を焼いている雑草なのだから感謝されるわよ、と言い放ちます。
クズが嫌われているのは、彼女の近所だけではないようでした。
アメリカ南部では19世紀に緑化や飼料用として、日本から導入されましたが、天敵もなく土地にも合ってすくすくと繁殖し過ぎた結果、今や駆除困難な厄介者で「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されるまでに。
葛餅や葛きりは、クズの根からとるクズ粉から作られます。ツルを編むのは友人の発明ではなく、大昔からの利用法でした。昔はそれを利用するために定期的に刈り取っていたので、茂り過ぎることもなく、共存できていたようです。
鍋敷きを編むだけでは、クズの繁殖力には及びませんが、古来、漢方薬(「葛根」湯)にも使われて来た薬効を生かす利用やバイオマスエタノールを作る利用法が研究されているそうです。うまくいけば、空き地や道路脇は無尽蔵の宝の山。お金を払って、クズを刈らせていただくことになるかも?
いきなり、本来のリース作りを忘れて鍋敷きに爆走した私たち。
はっと気がつき、後半無事にリースも2個ずつ作り上げました。
リング状の土台は発砲スチロールで作る予定でしたが、思いついてクズの輪にしてみると、自然な見た目になりました。
トウヒの葉だけの緑色のリース、松の香りがさわやかです。