デシャップ

掲載日:2014.11.10

飲食店で働く知人に教えてもらった言葉です。

シャラップ(黙れ!)ではありません。レストランの厨房と客席の間にある料理の受け渡しをするカウンターをこう呼ぶそうです。

何語なのでしょう?「多分、英語の dish up(皿をだす場所)だと思う」と知人。洋食文化が日本に入って来た頃、耳で聞いた言葉がカタカナになったような、古風な感じがします。ハヤシライスとかコロッケのような明治の香り。

厨房中にあるカウンターや台の中でも、そこは特別な場所で、新人時代はいつも「デシャップ拭け!」と怒られながら、塩素のスプレーと青いタオルを持ってごしごしするのが彼の役目だったとか。

そこが神聖な場所なのは、お料理がデビューするステージだ、というだけではありません。そこは厨房と客席の職人の仕事の境界だ、という理由もあるらしいのです。

単純過ぎる例で恐縮ですが、たとえば料理ごと皿をひっくり返してしまったような時、それがデシャップ前か後かで、あやまるのは料理人かウェイターか、が決まるのでしょう。

建築の現場でも職種間でたまに起きるあれだな、と思ったことでした。お客様に迷惑はかけられないから、誰かが頑張って失敗をフォローするのは決まりですが、その前に責任ははっきりさせとこうぜ、というところ?

ああ、料理のでてくるとこねと思って聞いていたのですが、意味が少しわかると、その場所の目に見えない緊張感が急に貴重に思えたことでした。

住宅では事情は違います。我が家ではキッチンとホールの仕事人が兼任なので、責任の境界はありません。でも、慌ただしいキッチンの気持ちを切り替えるために、小さなデシャップは有効かも。

キッチンカウンターの一部に、お料理の出し入れ以外にはモノを置かないことにした、ピカピカのスペースを作ろうかな。