「二本松農園の1000日」

掲載日:2015.03.12

東日本大震災から4年です。地震と津波。そして想像もしなかった原発事故のそれから。

当時、放射能汚染の風評で福島県の農家が困っているニュースを見て、たまたま見つけた福島の農家が運営するネットショップで思わず私は「ニラ」と「胡瓜」を買いました。そして、たくさんのニラで友人達とチャリティ餃子会を開いたのでした。

久しぶりにそのネットショップを覗くと、店主(農場主)が書いた奮闘の記録の電子本があって、迷わず購入。すぐダウンロードして一気に読みました。

読んでいると、あの時の気持ちがよみがえり、喉の奥がつまって涙が出てきました。私は何の被害も受けていないというのに、おこがましく情けない。

そのショップは一度、閉店したことがありました。「もう大丈夫」になったわけではあるまいなと、気になっていました。再開のお知らせがあった時には、よかったと思う反面、よほど大変なのだろうなと胸が痛みました。

店主はどんな人かしらと思っていました。元気な若い農家ファミリーかな?とか。本を読むと、50才で公務員を退職して、自立できる仕事として農業を始めたという、ちょっと意外な店主の経歴。

農業2年目の春、大地震がおきました。村の情報をネットで発信しつつ、風評被害(出荷停止でない野菜も売れない)を受けている野菜をネットショップに載せると、すごい売れ行き。私のように、何かしたいが何もできない人が大勢いたのです。

やがて始めた首都圏の直売では、販売のお手伝いをしたいという人が来てくれました。「福島までは行けないけれど、ここでなら出来るから」。販売や接客の得意な助っ人が来てくれて、店主はどんなに有り難かったことでしょう。出来ることをするのが、お手伝いなのです。

首都圏での直売も好調ではあるものの、継続的な経営としては厳しく。またネットは善意を集める力がある反面、悪意の炎上も起きます。

多分、店主は穏やかで落ち着いた性格の人だと思うのですが、さすがにキレたことも、死のうと思ったこともあったらしいことがわかります。生き延びて、本を書いてくれてありがとう!

このネットショップの商品には、いくつか変わったものがあります。買った人の家でなく野菜を被災地に届けるというもの、ジャムを制作販売する気仙沼の子育てママグループに材料を送るというもの、切り刻まなくても少量の野菜でも放射能を測定できる機械を農園に購入するカンパ、微生物による田畑の除染支援カンパ、農園へのカンパなどの「応援商品」です。

店主の本「二本松農園の1000日」を買った後、野菜の放射能非破壊測定器の募金を一個、カートに入れました。