トクサ
掲載日:2015.06.11
友人と千歳川沿いにあるレストランに行きました。清流には釣り人の姿もちらほら、青葉が茂って初夏の風情です。
駐車場からお店の建物へ歩いていると、友人が「これこれ」と言いながら、道路のわきに生えていた草をむしりました。「これで爪を磨くときれいになるのよ」と。
丈が40㎝くらいの、緑色の細い棒状の植物です。短い葉がない太いスギナの芯?上から引っ張ると、節のところから抜けてきます。触るとスギナによく似たざらっとした感じ。
私もむしって、爪をこすってみます。ペーパーの爪やすりよりも細かく柔らかく、植物のほのかな湿り気もいい感じ。やすりで爪を磨く時の嫌な感じがありません。爪のお手入れはシンプル自然派の友人と私。こりゃ、いいわ、と言いながら店に到着。
「トクサ」という草です。伝統的な漆工芸では、磨く工程でこの草を使うという知識はあったのですが。砥石の「と」、あるいは「研ぐ」でトクサだったのですね。
帰宅後、調べてみました。漆やベッコウ、ツゲの櫛など日本の伝統工芸ばかりでなく、バイオリンの名器ストラディバリもトクサで磨かれているとか。昔の大工は、ゲンノウの柄をこれで磨いたとか。ある寿司の名店では、白木のカウンターを毎日これで磨くのだとか。松下幸之助が最初の奉公先での仕事は、掃除と子守りと火鉢をトクサで磨くことだったとか。
どうやらトクサは木を繊細に磨き上げるのに、最適な材料のようでした。ただし、手間を惜しまずにしなくてはいけないらしい。
男性あこがれの趣味のそば打ちの麺棒を磨くのにも。木管楽器のクラリネットやサックスのリードを削るのにも。手間が問題にならない趣味の分野では多いに活用できそうです。
トクサは、和風のお庭の植栽に使われることもよくあります。半日陰の場所や坪庭にさりげなく植えてあるのを見かけます。
また、直線的な奇妙な姿は、コンクリートや土壁にも意外と似合うもの。室内の鉢植えや苔玉にしてもモダンな面白さがあります。
さいわい北海道の風土にも強いらしいので、手打ち蕎麦打ち、クラリネット吹き、自然派ネイル好きの方は、たしなみにひとかぶ植えておくのもよいかもしれません。ただし、お庭では殖え過ぎにご注意を。