染付便器
掲載日:2016.10.10
少し前になりますが、誘われて「染付便器の民俗誌」という展示会を見に行きました。(江別市セラミックアートセンター。染付便器の展示は終了)
便器のおしゃれ心は、現在では機能と美しい形と色に向いています。しかし染付便器は、陶器に藍色の絵付けすることで美意識を表現したものです。染め付けの壷やお皿と同じように、白い地に藍色で花鳥風月や幾何学的な模様が描かれた豪華な1点モノでした。作家のサイン入りのものまであって、用途がそれなのでちょっと困ってしまうような。
和風の絵付けなので、江戸時代の殿様やお姫様が使っていたのだろうと誤解していたのですが、染付便器が作られるようになったのは、便器が木製から陶製になっていった明治時代からだそうです。最先端にハイカラな陶製便器を、さらに美しく、かっこ良くする工夫だったようです。
それまでの木製の形が、陶器にも引き継がれているのが興味深いところ。たとえば、男性用の小便器。筒型のものは桶だったなごり。中間に竹の節のようなでっぱりが回っているのは、桶のタガを模したものだそう。四角い形のは、板を組んで作った箱型の系統かしら?陶器で広く平らな面や角を作るのは難しそうですが、技術があるので作ってしまったか。
素材の特性を生かした新しい形を思いつかなかったのか、あるいは慣れた形がやっぱり落ち着くね、ということ?進化の行方は、不思議です。
染付便器は和風便器が主流だった昭和30年頃までは、わりと存在していたので、見たことのある人もまだ生きているはず。ちなみに私は「子供の頃住んでいた社宅はこんなのだった」と言って、友人たちに「お屋敷のお嬢様」とからかわれましたが。多分、幼少期の記憶がごっちゃになっているのでしょう。私の育った社宅は、風が吹き込む板張りの長屋でしたから。(トイレが隣と薄い壁1枚で、学校に行く前に隣の子と壁をとんとんし合うのが楽しかったです)
北海道で外便所はあったかとか、男性は家のトイレで小をする時立ってするのかとか、あまり語り合う機会の少ない話題について新鮮な気分でおしゃべりしながら楽しい時間を過ごしました。
その後、館内の常設展などを見て帰りました。江別市は明治時代からレンガを生産してきたまち。歴史の厚みを感じさせる収集品や現代の道内作家たちの作品群など、なかなか見ごたえがありました。陶芸好きの方におすすめです。