「陸前高田」のこと

掲載日:2017.03.10

その地名は、ずっと以前から知っていました。昔、お世話になった大工さんたちが、陸前高田から出稼ぎに来ていた人達だったのでです。棟梁のもとチームで働いていて、お盆には車を連ねて東北に帰って行くのです。

「お盆に大工さんが帰る時には、おみやげを持たせてあげなさい」と先輩に言われ、メロン2個入の箱を渡した私。盆明けに棟梁から、どっさりお返しを渡されました。しまった。6個入にすべきだったか?

おみやげの中には、山ブドウのジュースと海苔があって、どんなところなのだろうと想像しました。

棟梁が自慢げに「俺の家」と言って、財布から写真を出して見せてくれたことがありました。瓦葺きの和風住宅で、玄関にはお寺のような唐破風がついていて、たまげました。

写真で見た家のまわりに樹木が茂った印象から、内陸の山の町と思い込んでいたので、おみやげの海苔や海産物を不思議に思ったのでした。

その町を何度も見る事になったのは2011年、東日本大震災の時です。ああ、こんなところだったのか。失われた海と緑の風景を見て、あの家はどのあたりだったのか、とTVを見つめたことでした。

少し前にうわさで「引退して、みんなで帰った」と聞いて、よかったなあと思っていたところでした。個人的に親しかったわけではないので、震災後の消息はわかりません。でも、その地名を聞くたびに、腕のいい大工が働いている土地だね、と思っています。