とりぱん

掲載日:2018.03.12

陽射しが春めいて、庭先にやって来る小鳥たちも賑やかになってきました。まだエサは少ないからひもじかろうと、ついパン屑などやってしまいます。自然界の営みに干渉してはいけないなと、後ろめたいですが。

葛藤していると、友人が漫画本を貸してくれました。作者の自宅の野鳥のエサ台をめぐる日常を描いたもので、その名も「とりぱん」(エサ台に置くパン?)。ご紹介させて下さい。

友人の推薦理由は
1.野鳥との距離感が、ほどよい。厳し過ぎず、ゆる過ぎず、べたつかず、心地よい。
2.作者が住むのは東北地方(盛岡か)。北海道と気候や鳥の種類、生活感が近くて親しみやすい。
3.作者自身や登場する家族が面白く感じがいい。

まず4冊を渡され、読み終えると次を貸し与えられ、現在13巻まで来たところ。(22巻まで出ているもよう)

私の葛藤はめっきり軽くなり、なぜか急に鳥を見分けられるようになりました。私は目が悪いので識別能力が低く、なので種類には関心がなく、シジュウカラとゴジュウカラも覚えられなかったというのに。見えないのは同じですが、鳥のオーラ?が認識できるようになったということかも。

一見、雑に見える絵ですが、何かを伝える力があるようです。漫画雑誌「モーニング」の新人賞で、審査委員のかわぐちかいじ・さだやす圭両氏の絶賛を受けたそうですから。受賞後、2005年から連載開始、ネタも切れずに順調に続いていました。

そして2011年3月11日。
作者は移動図書館で本を借り、買い物に寄り、いつもどおりに始まった午後。運転していた車が妙にふらつき。途中のスーパーが停電しているのを見ました。戻った家が「やけに静かだな」と、震災編は始まります。

作者の家族は無事で、住む町も被害が少なかったようです。しかし、2話からなる震災編は、親しんだ語り口とキャラクターたちではあるのに、張りつめたものが伝わってきて思い出されます。

後書きで、震災に触れずに続けることは不可能だったとコメントしていますが、これも作者の使命だったのだと思いました。

☆とりの なん子
『とりぱん』1-22巻 講談社 ワイドKCモーニング 2006年~
(震災編は 第11巻にあります)