空き家その後
掲載日:2021.11.10
一人暮らしだった私の母が施設に移り、空き家になった実家。再び母がそこに戻るとも、別の町に暮らす子供たちが住むとも思えませんでしたが、家の今後について決断されることはなく、ただ時間が過ぎていました。
今年の2月、実家の屋根の煙突が傾いているという知らせ。屋根雪に押されてブロック造の煙突が落下しかけ、まわりの屋根も壊れていました。
家族会議の結果、家は解体して土地は売却しようということになりました。費用をかけて屋根の修理をしても、空き家であることのリスクはなくならないのです。
仲介をお願いした不動産屋は、解体する前に「既存住宅付きの土地」で売り出してみましょう、と提案してくれました。めっきり売買の活気がない古い住宅地なので、逆に色々なニーズがあるかも。土地や家にかける金額を抑え、多少のリフォーム工事程度で住む家を手に入れたい人もいるかもしれない、ということでしょうか。
そうは言っても築51年。窓はアルミサッシで、断熱気密以前の仕様。半世紀生きのびた家の骨組はしっかりしているともいえますが、現在の基準には多分合わないでしょう。
買う人いるかしら?と半信半疑の家族です。しかし、思い出多い家に新たに住んでくれる人がいるかも、というアイディアに大いに気持ちは救われました。短期間、家付で広告を出し、秋からは解体更地渡しで募集することに決定。
家のあれこれの整理を始めた夏のある夕方、弟が片付けをしていると、外から家を仔細に眺めている年配の男性がいて「いい家だね」と言って帰ったと電話がありました。すごく家を気に入ってた、買ってくれるかもよ、と。
しばらく後、不動産屋に話があり、その人は家の中も見て、やはり欲しそうだった、と。が、見積もりや銀行やらと、返事がなかなかもらえないまま、気がつけば秋も終盤です。空き家事故だけは避けたいという当初の目的が妙なことになりそうで、結局その方にはお断りし、解体工事を発注したのでした。
残念なことでした。もし、数年前に同じことを思い立っていたら、どうだったでしょう。家の屋根は壊れていなかったし、もう少し待てたかもしれません。
うまく売れたなら、買い手はお買い得と思ったでしょうし、売主は解体費用を節約でき、家はもう少し活躍の時間を得たことでしょう。
愛着のある家も、いつかは手放したり終わりにする時がきます。長く空き家にしていると、事故が起きたり、処分の選択肢が失われていきます。適切な時期の決断が、家族と家にとって、スムーズなその後につながります。前に進みましょう!